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『割り箸が地域と地球を救う』

前回のコラムでは、森林ライター・浜田久美子さんとの出会いに触れつつ、ご著書を数冊紹介しました。
せっかくの機会だと思ってメルマガを浜田さんにお届けしたところ、すぐに返信がありました。承諾を得て、以下に引用します。

驚きと共に、感慨深いものがありました。
書いてくださったように、私にとってのこの10数年は、飽かず繰り返し手を変え品を変えただ1つのことを伝えている月日です。
私自身にはその自覚がありますが、それを通して見てくださる方というのはもちろん多くありません。私が知らないだけかもしれませんが。
なので、松村さんのご紹介はとても嬉しかったです。驚きが勝っているというのも確かですが。

私が浜田さんの仕事に注目し続けてきたのは、スタンスがぶれないからでした。
「森の力」に対する個人的な感謝と、その力を多くの人に伝えたいという熱意が直結して一貫しているからです。

私は、公私をあえて分けることなく、個人的なことと公共的なことが重なっている人に魅力を感じてしまいます。
市民活動にかかわっていると、あちらこちらで、そういう人に出会います。
そして、ここから先は適当な推量ですが、そういう生き方・働き方をしている人の間には、見えない磁力が働いているような気がしています。
私はそうした磁力を強く感じ、ときに引き寄せられてしまうタイプだと思います。
浜田さんには驚かれてしまいましたが、私がずっと浜田さんの仕事を追いかけていたのは、方位磁石が北を指すのと同様に自然なことだったように思います。

今から10年前の1999年8月19日~21日、私は高知県で開かれた「第5回森林と市民を結ぶ全国の集い」に浜田さんとともに参加する機会がありました。
「よこはまの森フォーラム」から交通費を出してくださるというので、喜んで出かけたのでした。
もちろん、無料で行くからには市内の活動を広報するようにという指令がありましたので、横浜市内の森づくり団体が発行した冊子やパンフレットを大量にリュックサックやトートバックに詰め込んで行きました。その重たかったこと・・・。
一日遅れていらっしゃった浜田さんが重たそうに荷物を扱っている私を見て、「荷物を送ればよかったのに・・・」と言われたとき、なぜ自力で持って来てしまったのか自分でも不思議でした。きっと、何か役に立とうと必死だったのだと思います。

さて、この集いでは全国から集まった森づくり関係者と2晩をともにし、夜遅くまで語り合いました。
たまたま、樹恩ネットワークの鹿住貴之さんと部屋が同じでした。鹿住さんは事務局長になったばかりでしたが、当時から間伐材を使った割り箸を大学生協で使ってもらう活動をされていました。
その活動にかける思いを聞いて、私よりも年下なのですが、格好いいなぁと感心してしまいました。

その後、鹿住さんとは2-3年に1回くらい連絡を取る程度の関係でしたが、私の頭の中ではいつも併走しているような感覚がありました。
併走するためには、私もせめて同じくらいのスピードで前へ進まなければなりません。
私は、こうやって勝手に磁力を感じた人たちとマラソンを走っているのです。
ランナーズ・ハイに溺れることなく、ゆっくりとですが、確実にゴールに向かって、少しずつでも足を動かし続けようと心がけています。

これで、ようやく本を紹介できます。

今回取り上げるのは、佐藤敬一・鹿住貴之『割り箸が地域と地球を救う』(創森社、2007年)です。
内容は、割り箸の歴史や文化のほか、樹恩ネットワークが1998年から取り組んでいる「樹恩割り箸」について、詳しく説明されています。この10年間一貫して続けてきたぶれない取り組みを読むことができます。
この本が出版されたとき、鹿住さんの思いが形になったように感じて、とても嬉しくなりました。
志高く着実に仕事をしている方の作品にふれると、私も背筋を伸ばさないといけないと緊張感を覚えます。
そうした人たちに引っ張られながら、これまで歩んでこられたのだと思うと、この恵まれた環境に自分がいることにあらためて気づかされます。

ついでに、もう1つ鹿住さんとのエピソードを紹介しましょう。
2007年末のことでしたが、NORAは先行きが不透明な中で、どのような方向性を打ち出していくべきか悩んでいました。
私は漠然と、もっと多くの人に活動を知ってもらいたいと思い、久しぶりに鹿住さんに電話を入れました。
そして、樹恩ネットワークの会報誌でNORAを取材して取り上げてほしいと頼みました。

すると、NORAはいつも良い活動をやっているので、いつか会報誌で取り上げようと思っていたけれど、NORAはいつでも取材できる間柄なので、取材先に困ったときのためにキープしていたのです、鹿住さんは答えました。
そして、すぐに私の依頼に応えて取材に来てくれました。
あのときの対応の素早さには、頭が下がりました。困っていたときに助けてくれた思い出は、忘れられません。

さて、次回のコラムでは、浜田さんの以下の宿題に答える予定です。

そうそう、あの文章の中で、松村さんが市民活動の中でも里山保全に強くかかわりたいと思っていらしたのはどうしてなのかなあと思っていました。いつかそのあたりを伺える機会があるとうれしいです。

当初は、今回お答えするつもりでコラムを書き始めたのですが、浜田さんとの出会いを思い起こしていたら、鹿住さんとの出会いについて書きたくなってしまったのです。
と言うわけで、次回は私が里山保全にかかわろうと思った理由について書きます。

佐藤敬一・鹿住貴之(2007)『割り箸が地域と地球を救う』創森社.
よこはま里山研究所のコラム
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