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『地図リテラシー』

羽田康祐『地図リテラシー入門―地図の正しい読み方・描き方がわかる』(2021年、ベレ出版)

今年の2-3月は年度末までに引きうけた仕事が時間的にも能力的にも大変で、しばらく心をなくしていた。
4月に入り桜が散った頃から、ようやく人間に戻ってきた感じだ。

その仕事は、地理情報システムGISを使う必要があった。
学部時代は地理を専攻していたこともありGISには興味があって、これまでも多少いじる機会があった。
しかし、見映えのよい成果物を短時間で仕上げるにはスキルや経験が不足していたので、精神的にキツい仕事であった。
約30年前、環境コンサルタントで働いていたときは、年度末といえば、こんな感じで心をなくしていたことを思いだした。

それでも、仕事を離れてみれば、GISにはいろいろと可能性があると感じ、魅力的に映る。
空間情報をレイヤーごとに整理し、いろいろと解析できるGISを、環境保全に生かさない手はない。
もちろん、地域社会の課題解決などにも生かせるに違いない。
Googleマップなどを通してGISを利用しているけれど、アプリを使うだけではなくて作る側から今後できることを考えたい。

私の周りには 『ブラタモリ』が好きな人は多い。
この番組の功績の1つが、地理の面白さを社会に伝えたことにある。
日本地理学会は、NHK「ブラタモリ」制作チーム(非会員)に対して、2010年度に学会賞(団体貢献部門)を与えている。
スリバチ、凸凹、微地形を歩きながら、地形の成り立ちを想像することが楽しいという人は珍しくなくなった。
地理はそのポテンシャルが発揮されれば非常に面白いし、近年は一般の人が読んでも楽しめるような地理書が増えている。
大衆性と専門性のバランスが良い本だと記憶している(内容はほとんど忘れた)のは、貝塚爽平『東京の自然史』足利健亮『地図から読む歴史』
ともに今は講談社学術文庫に入っていることから、長く読み継がれているようだ。
しかし、GISに関しては、これまで良い本に巡り会っていない。

今回取り上げた本書は、私たちが身に付けるべき地図リテラシーについて説明している。
Googleマップに慣れきっている私たちは、疑いもなく地図アプリを利用しているけれど、少し掘り下げていくと問題のある使い方をしている場合もある。
地図全般について説明しようとすると幅が広すぎるので、主題図、地図投影法、GISの3つを中心に取り上げるという考え方は理解できる。
たしかに、知らないことも少なくなかった。
印象に残ったことを少し挙げると、たとえば、仕事で使用したGISソフトを開発した会社(ESRI)の設立年は、私が生まれた年と同じ1969年であったと知り、親しみを覚えたこと。また、日本では、1970年の天六ガス爆発事故以降、ガス会社がガス管の配置を管理するためにGISの開発を積極的に進めてきたと知り、学部4年生の時に東京ガスからGISの仕事をしないかとリクルートされたのは、そういう経緯があったのかと合点がいったとか、どれも小ネタの類いである。
GISはツールなので、読者の興味を惹きつけるような問いを立てにくいのかもしれない。どうしても説明的になってしまいがちである。
同様のコンセプトで書かれた若林芳樹『デジタル社会の地図の読み方 作り方』(2022年、ちくまプリマー新書)にも同じような印象を覚えた(内容は『地図リテラシー』の方が充実している)。
面白いGIS本に出会えるのは、もう少し先になりそうだ。

「おわりに」に書かれているように、海外と比べると日本では地理学やGISの重要性に対して社会的な関心が低く、一般的にGISのスキルに支払われる対価も低い。
今年から約半世紀ぶりに高校で地理必修が復活するが、これを機会にに地理への関心が浸透していくとよいのだが、どうだろうか。
みんなでオープンデータの地理情報を作るプロジェクト「OpenStreetMap」には以前から興味を持っているが、なかなか広がっていないようだ。
地理学との出会いを通して学ぶ楽しさを知った者として、今後は積極的に自分の活動の中に地理的な思考やツールを取り入れていこうと思う。

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