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ニューヨークの夢

1週間ほど前、シェイン・マガウアン(Shane MacGowan)が退院したというニュースを見たのに、訃報を知って「やっぱりダメだったか・・・」と残念に思った。大好きだった。

クリスマスが近づくこの時期、ザ・ポーグスの「ニューヨークの夢(Fairytale of New York)」を聞きたくなる。その歌詞が、「No Music, No Life」のFacebookページに載っていたのでシェア。

このクリスマスソングが入った名盤『堕ちた天使(If I Should Fall from Grace with God)』(1988年)は、ピーター・バラカンがライナーノーツを書いている。
CDを購入したのは浪人のときだったか、その解説が素晴らしかったことはよく覚えている。これを読んで、サビの部分(The boys of the NYPD chore were singing “Galway Bay”)は、エッセンシャルワーカーを務めるアイルランド移民の境遇を歌っていると知ることができたからだ。
当時は、輸入盤と日本版とどちらも選べたが、このCDは日本版を選んで大正解だった。

久しぶりにそれを取り出して、「ニューヨークの夢」の解説文を引用しよう。

これは、それぞれ移民としてアイルランドからニュー・ヨークへ渡ってきた初老の男女が、かつてふくらませていたバラ色の夢を思い出しながら、ついに這い上がることも出来ず、とっくに夢すら持てなくなった暗い現実の中で、ののしり合いつつお互いを必要とし続けている歌だ。最初に出会ったのもクリスマスで、歌っている“今”もクリスマス、そしてリフレインの部分は「ニュー・ヨーク警察の合唱隊は“ゴールウェイ湾”を歌っていて、そして教会の鐘はクリスマス・デイの到来を発表していた」というくだりになっている。“ゴールウェイ湾”はアイルランドの大変有名なフォーク・ソングだが、アイルランド人以外の人間が歌うことはありえない。ということは、ニュー・ヨーク警察の合唱隊の多くのメンバーはアイルランド人である。映画の脇役で必ずと言っていいくらい出るアイルランド人のお巡りさん(最近は『アンタッチャブルズ』のショーン・コナリー)でも分かるように、警察に勤務するアイルランド人は非常に多い。いかにも律儀なイメージだ。その律儀さのせいか、世渡りのうまい感じは決してしない。酒を飲んでどんちゃん騒ぎをし、金が少しでもあれば大穴にかけてしまうのは一般的なアイルランド人像だろう。そして、確かにそれが当たっている場合が多い。この歌の主人公もやはりそういうタイプの人間で、ニュー・ヨークの弱肉協力の世界では無力なものだったろう。
「ニュー・ヨーク警察の合唱隊は“ゴールウェイ湾”を歌っていた」だけの短い言葉によって、これだけ多くのことを考えさせるシェイン・ムガウアンの才能に脱帽してしまう。聴くたびに涙がわいてくる感動的な歌だ。

『堕ちた天使』ライナーノーツ(ピーター・バラカン)
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