「スポーツも里山も」楽しめる公園づくりを目ざして―望ましい公園とは何かを問い続ける社会へ
2023年7月16日(日)、町田市立野津田公園をフィールドに環境保全・公園づくりを長年にわたって取り組んできた市民団体「野津田・雑木林の会」が、「野津田公園湿性植物園・SOS緊急集会」を開催した。
→「水辺の植物園の保全問う 町田の野津田公園にスケートパーク建設計画巡り、あす市民団体が集会」(東京新聞、2023.07.15)
- シンポジウム|野津田公園の里山「地域的・現代的意義を考える/いま~未来」
- 日時:2023年7月16日(日)13:30~15:30
- 場所:町田市民文学館ことばらんど2階大会議室
- 登壇者:清水善和さん(駒澤大学教授)、山崎慶太さん(和光中学高等学校教師)、久保礼子さん(野津田・雑木林の会代表)
- 主催:野津田・雑木林の会
私は、この集会に参加したが、その場では発言しなかったので、あとで自分の考えをまとめて主催団体に送った。
その内容をここに掲載しておく。
1.第二次野津田公園整備基本計画を問い直す
1)社会のニーズに合っているのか?
2014年の第二次整備計画策定時に、社会ニーズの変化を踏まえて、「スポーツと里山を楽しめる公園」から「自然の中で楽しむ総合スポーツパーク」へと目的が見直されたとのこと。
当時は、東京オリンピックの開催決定の直後で、スポーツ振興への期待が最高潮であったであろうし、長期的なデフレ下にあって地域経済の牽引役として公共事業への期待も高かったかもしれない。
しかし、その後約10年が過ぎ、その間にコロナ禍を経験して自然体験のニーズが高まり、自然に恵まれた公園の重要性は強まったと思われる。また、非正規雇用者の増加に伴い収入格差は増大し、最近の物価高騰は低所得者層の家計を直撃していることから、老若男女が参加できる社会的包摂の場としても公園の価値が高まっている。
2)自然環境の価値を受けとめているのか?
第二次整備基本計画が策定された2014年は、2022年の昆明・モントリオール生物多様性枠組はもちろん、2015年のパリ協定より前のことなので、グローバルな環境対策として重要な気候変動と生物多様性に対する配慮が不十分である。
湿性植物園をスケートボードパークへ改変する工事は、希少な生物種が見られる湿地を失うと同時に炭素吸収源も失うことも意味する。また、日本の生物多様性を保全するうえで里山環境の重要性は指摘されているが、近年は湿地と草地が急速に減少していることから、その保全は急務となっている。また、近年のネイチャーポジティブやOECMといった考え方も含まれていない。
このように第二次整備基本計画の策定以後、社会経済のニーズや自然環境の価値が急速に変化したことから、計画の全面的な見直しとまでは言わないまでも、部分的な修正は検討すべきであろう。
2.パークセンターゾーンの整備計画を問い直す
1)誰にとってのスケートパークなのか?
スケートボード愛好者から、市内にスケートボード場を整備して欲しいという強い要望はあると聞いている。しかし、それを野津田公園内に、しかも、湿性植物園を潰してまでつくって欲しいとは考えていないのではないだろうか。
社会的なニーズを踏まえて、市内の適地にスケートボード場を整備することには賛成であるが、なぜ誰も求めていないこの場所に整備使用とするのか再考すべきではないか。
2)動植物への影響を考えているのか?
計画によれば、2023年度に自然環境・猛禽類調査を実施するとあるが、年に1回しか現地調査を実施しないと聞いている。生物相を把握する場合、少なくとも年に3回(できれば4回)以上調査する必要があり、これでは工事ありきのアリバイ作りと思われても仕方ない。
さいわい、野津田公園では市民団体や専門家らが、長期にわたって自然環境を調査してきた実績がある。今年度の調査結果を公表していただくとともに、市民の調査結果と比較して、湿性植物園を含むパークセンターゾーンの自然環境の把握に努めるべきであろう。
3.公園づくりの進め方を問い直す
1)町田市は誰の声を聞いて公園づくりを進めているのか?
第二次整備基本計画を策定する際に、9回に及ぶ懇談会は開かれたが、実質的に計画について議論する時間は少なかった。また、計画(案)に対してパブリックコメントを募集したが、大きく賛否が割れたにもかかわらず、その後丁寧に合意形成を図ろうとはしなかった。
現在、芹が谷公園の再整備計画も多くの地域住民や関係者から反対の声が挙げられており、公園という公共空間のつくり方について、その意思決定のプロセスについて、町田市の姿勢が問われている。
2)誰とともに問い直すのか?
最後は、今回のアジェンダを設定した運動側への問いかけである。
以上の通り、このスケートパーク整備をめぐる問題は、環境問題であるだけではなく、公園づくりの合意形成をめぐる社会問題、自治の問題でもある。
現在、町田市内で同時並行的に生じている問題の多くは、後者の自治をめぐる問題なので、他の運動とも連帯できるだろう。
そのためには、インターネットの活用が不可欠と思われる。これまで、この問題について知らなかった人、興味関心を持っていなかった人でも、そこにアクセスすれば、これまでの経緯や何が問題なのかが集約されていて、興味を持った人が次なるアクションを起こせるようなウェブサイトがあるとよい。たとえば、今回の緊急集会で配布された資料のうち公表できるものはどんどんアップするなど、関係者の知りうる情報は可能なかぎり公開した方がよいだろう。
透明性の高い情報公開と十分な合意形成という点において、町田市とは公園づくりの進め方がまったく異なることを示したい。
誰もが参加できるように、この問題を考えるための場として開くことが大事なので、野津田・雑木林の会としてではなく、町田芹が谷フォーラムのように、新たにウェブサイトを立ち上げることが望ましい。
ウェブサイトを立ち上げたら、パークセンターゾーンの自由記述の生データと、そのデータの分析結果を公表できるとよい。分析のプロセスを隠さずに明らかにすることは、運動側の信頼性を高めることになるだろう。
2023年7月16日
町田市在住 松村正治