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誰ひとり取り残さない環境論 Part5:ライフの視点から考えるSDGs時代の自由と正義

このコースでは、SDGsが目ざす「誰ひとり取り残さない」環境のあり方を考えます。ここで「環境」とは、人びとの生きる場というような意味で捉えていますので、人として生きる権利を保障する観点から、社会的包摂のための環境(自然・文化・歴史・制度など)について考えることになります。
今日、世界的に求められている環境対策、とりわけ気候変動対策は、自由と正義の両立を難しくし、そのしわ寄せは立場の弱い者に偏ることが懸念されます。このような状況において、私たちは豊かなライフ(life: いのち・人生・暮らし)を送る上で自由という価値を手放さずに、環境や社会の上で正義を実現することができるのでしょうか。
このような大きな問いを抱きながら、リスク社会、農福連携、長崎原爆、環境正義、森林ガバナンス、気候市民会議といった多様なテーマについて学び、アクションに向けて思索を深めます。

曜日時間:火曜日 原則隔週19:00-21:00
開催方法:オンライン開催
コーディネーター:松村正治(環境NPO代表、大学教員)

第1回 環境リスク社会において環境的公正(環境正義)はなぜ重要か

開催日:2022年7月12日(火)19:00-21:00 
講師:寺田良一(明治大学)

概要:今日の環境問題においては、環境ホルモン、遺伝子組み換え作物、低線量の放射線被ばくなど、すぐには健康被害が顕在化しない、潜在的、長期的な環境リスクが問題化してきました。また環境リスクは、経済格差等を反映して過疎地域や貧困層に偏る傾向があります。これらに対する政策原則として、予防原則、市民参加原則、情報公開原則などが必要ですが、日本は被害が顕在化する以前のリスクには概して鈍感で政策化が遅れています。これらを、環境問題と社会的公正の問題として考えていく必要性をお話ししたいと思います。

第2回 「誰ひとり取り残さない」を考える―見沼田んぼ福祉農園の取り組みから

開催日:2022年7月26日(火)19:00-21:00 
講師:猪瀬浩平(明治学院大学)

概要:見沼田んぼ福祉農園は、埼玉県の見沼田んぼ公有地化推進事業を受けて1999年に開園した農園です。障害のある人が中心になり、様々な人たちが営農活動をすることを通じて首都圏近郊の大規模緑地空間である見沼田んぼの保全にかかわっています。この農園の実践から、「誰もひとり取り残さない」とはどういうことなのか、課題を含めて考えたいと思います。

第3回 詩人・福田須磨子(1922-1974)と長崎原爆

開催日:2022年8月9日(火)19:00-21:00 
講師:友澤悠季(長崎大学)

概要:長崎原爆を生きのびた人びとにとって1945年8月9日はあくまで始点である。怪我の癒えないうちから働き口を探し、なんとか生活を立ててきた。その中の一人、福田須磨子には、生涯に三冊の詩集と、『われなお生きてあり』(初版1968年)があるが、52歳で亡くなった彼女の名を知る機会は、長崎県内でも多くはない。その詩作はなにを訴えかけるのか。いくつかの作品を題材に、戦後の彼女の暮らしぶりと精神の一端を読み解いてみたい。

第4回 環境正義が問う世界~環境問題から災害まで

開催日:2022年8月23日(火)19:00-21:00
講師:原口弥生(茨城大学)

概要:アメリカで始まった環境正義運動は、アメリカ国内の環境運動や環境政策に影響を及ぼすだけではなく、SDGsの展開や気候正義など今や世界的な環境正義運動へと深化してきました。近年多発する災害においても、環境正義は重要な視点を提起しています。アメリカでのハリケーン・カトリーナ災害、そして3.11福島原発事故を例に、環境正義の視点から、これらの災害や復興過程をどのように読み解くことができるのか考えてみます。

第5回 気候変動時代に森林の多元的価値を高める社会の仕組み

開催日:2022年9月6日(火)19:00-21:00
講師:相川高信(森林政策アントレプレナー)

概要:森林は多面的な機能を持っていますが、これは健全な林業経営があって初めて発揮されるというのが、日本の森林・林業政策の基本的な考えでした。一方で、気候変動対策として森林に対する期待が世界的に高まるとともに、森林にレクリエーションや癒やしを求める人達が増えてきています。さらにはデジタル技術の活用により、森林の多元的な価値を経済的・社会的に評価できる可能性も出てきました。具体的なフィールドの事例も紹介しながら、新しい時代の社会の仕組みを考えます。

第6回 日本の民主主義をアップデートする日本版気候若者会議の取り組み

開催日:2022年9月20日(火)19:00-21:00
講師:室橋祐貴(日本若者協議会)
コメント:神谷美由希(ゼロエミッションラボ沖縄)

概要:世界中で「代議制民主主義」の機能不全が起こっている。中間層の没落、格差の拡大に加え、社会問題の複雑化や、価値観の多様化、グローバル化によって、一部の人たちだけで決定し、短期的な成果を求める既存の民主主義体制では社会的課題の解決が難しくなっている。その代表例が気候危機だ。そこで政治参加の新しい回路として世界中で実践されているのが、「気候市民会議」、そして日本独自の取り組みである「日本版気候若者会議」である。

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