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現代社会学科シンポジウム報告

5月30日(土)、春の大学祭「スプリングフェスティバル」にあわせ、人間社会学部現代社会学科主催のシンポジウム「地域の力×若者の力による豊かさの創造」を開催しました。

基調講演は、『地域に希望あり』(岩波新書、2015年)を上梓したばかりの大江正章さん(出版社コモンズ代表)にお願いしました。講演題目は新著の題目から「地域に希望あり―農山村は消滅しない」。副題は、地方(自治体)消滅論に対する反論として知られる小田切徳美『農山村は消滅しない』(岩波新書、2014年)から借用したものでした。

大江さんは、脱成長の時代に入った日本社会では、一人当たりのGDP(国内総生産)が伸びても生活満足度が上がらず、若者の田園回帰願望が高まっているといったデータを示し、今後は定常型社会をめざすべきであること。また、豊かさを表す指標としてGDPではなく、GLH(地域総幸福)の増大を図るべきだと述べられました。さらに、若年女性人口が増えた島根県邑南町、有機農業と地場産業の提携による埼玉県小川町の取り組みなど、地域に希望が根づきつつある現状を紹介されました。

この講演の後には、地方で活躍している3人の大学OGに現場からの実践活動を報告してもらいました。すなわち、夫婦で岐阜県御嵩町に移住、新規就農し有機農業を営む永谷香さん(2008年卒)、地元・新潟県上越市の財団職員として農村体験プログラムを担当する小甲亜寿香さん(2011年卒)、地域おこし協力隊として島根県美郷町で直売所の経営にかかわり、現在は茨城県稲敷市で移住促進をサポートする岡田菫さん(2013年卒)です。3人とも、人間の生き方、社会のあり方を考え、望んだ未来をたぐり寄せるために活動しています。三者三様の報告でしたが、共通していたことは、自然とともに、人のために仕事をすることが人間らしく、生きている実感があるということでした。

大江さんとOGによる総合討論では、地方の暮らしは「不便」に見えるかもしれないけれど、各家では必ず庭で野菜を育て、季節ごとに山菜を採るなどできるので、そこに住む人びとは不便とは思っていないこと。「不便」だからこそ、人とのつながり、自然とのつながりが深くなるということ。グローバル化が進むなかでは、足もとの世界を確かにするように努めることが大事であるなど、これからの社会のあり方や、私たちが本当に求めたい「豊かさ」を考えるのに参考になる素敵な言葉にあふれました。

今回は同時開催の企画が多く、OGの生き生きとした話を聞いた在学生は少なかったので、別に機会を設けようと思います。

恵泉女学園大学人間社会学部現代社会学科主催のシンポジウム「地域の力×若者の力による豊かさの創造」報告(2015年5月30日(土)恵泉女学園大学スプリングフェスティバル同時開催)、学内誌『恵泉』用原稿

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