映画『日本と再生』

10月1日(日)、恵泉女学園大学(多摩市)で本作の上映会が開かれた。
大学が主催し、知り合いの多い(一社)多摩循環型エネルギー協会が共催する、くわえて、自然エネルギー研究の第一人者である飯田哲也さん(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)の講演もあったので観賞した。

この映画は、弁護士の河合弘之さんが監督した3作目で、『日本と再生』『日本と再生4年後』に続く作品である。
飯田さん曰く、監督しての河合さんの仕事は映画制作にお金を出したことで、企画・監修のほか現場の調整はすべて飯田さんが担当されたとのことである。

内容は、前2作が原発の問題点を描き出したのに対して、本作では、自然エネルギーを推進する取り組みについて、世界中・日本中を旅しながら、最新の状況を映し出している。このため、ドキュメンタリー映画というよりも、学習教材という印象を抱いた。

私は、チェルノブイリ原発事故をきっかけに原発の問題に関心を持ち、高校時代には高木仁三郎さんを尊敬して、原子力資料情報室の会員になっていた。
2000年頃には、木質バイオマスエネルギーの普及を目指す市民団体を設立し、原発に依存しない社会へと向かうために、自然エネルギーを推進しようと行動していた。

しかし、2011年の福島原発事故が予期されていたように起こってしまい、自分も原発推進派と同様に、このような過酷な事故が起きないだろうと、どこか高をくくっていたという危機感の浅さを突きつけられた。
その気持ちを整理できないまま、再燃した脱原発、自然エネルギー推進の動きに対し、今ひとつ気持ちを向けることができずにいた。だから、河合監督の前2作も見ていない。
ただ、少し心境の変化もあって、この作品は素直に見ることができた。

まず、「自然エネルギーは天気まかせで不安定」「自然エネルギーは高くつく」「ドイツの脱原発、自然エネルギー推進はフランスから原発の電気を買っているからできるインチキ」というような疑問について、分かりやすくユーモアも交えながら反論している。
しかし、そうした自然エネルギーの是非について、細かく議論している時間的な余裕もないほどに、世界のエネルギー事情は大きく変化してきている。
つまり、原発の是非は、もはや政治的イデオロギーの問題ではなく、早晩、経済合理性から決着がつくものだと思わせる。
政府による原発への固執は国民の経済的な損失を大きくするばかりだから、自然エネルギーへの転換を急ぐべきであって、かりに急がなかったとしても、グローバルな市場のメカニズムがよって、原発が退場させられるのは時間の問題だという感を強くした。

その理由については、作品をご覧になっていただくのが良いだろう。
ここでは、上映後の飯田さんによる講演「急速に進む地域分散ネットワーク型自然エネルギー革命~エネルギーデモクラシーの時代」の内容を箇条書きしておく。


飯田哲也さん「急速に進む地域分散ネットワーク型自然エネルギー革命~エネルギーデモクラシーの時代」

  • 自然エネルギー分野は変化が早い。1年前は考古学と言われる。
  • 自然エネルギーは、日本では脱原発のため、海外では温暖化対策のため。
  • 世界の自然エネルギー発電量は、風力と太陽光が圧倒的。近年は指数関数的に増加。
  • 風力は1980年から10年ごとに10倍増えてきたが、最近は鈍化し横ばいに。
  • 太陽光は1995年から7年ごとに10倍増えてきて、今年の世界需要は100GW超。
  • 設備容量でみれば、風力+太陽光が原発の約2倍。
  • 分散型エネルギーは、大量生産できるので技術学習効果が発揮される。
  • 製造コストが急激に下がって、急速に市場に広がるのが分散型の特徴。
  • すでに世界的には、風力も太陽光は10円以下/KWh、国によっては3円以下もある。
  • 日本も下落傾向にあるが、外国と比べると独歩高。建設コストが下がっていない。
  • 太陽光は、建物の壁にも組み込めるし、自動車にも載せられるので伸びしろが大きい。
  • 電気自動車の場合、車にソーラーを設置して約20%のエネルギーを自給できる。
  • 九州電力管内の電気は、自然エネルギーで60%以上賄う日もある。
  • 太陽光の発電量が大きいときは揚水発電で吸収する。
  • 玄海原発が再稼働すると太陽光分を揚水で吸収しきれず、原発か太陽光か止めないと。
  • 原料が無料で、国産の電気を優先するという国際標準の考えからすれば、答えは自明。
  • 風力と太陽光をベースとして、残りを柔軟に対応する「フレキシビリティ」が標準に。
  • EV(電気自動車)+AV(自動運転)+Share(カーシェア)が急速に進む。
  • 8年以内にガソリン・ディーゼル車が1台も売れなくなるという予想もある。
  • 実際、車は全体の5%しか動いていない。車も駐車場も不要ならば、売れなくなる。
  • グーグル、テスラがリードし、製造は中国メーカー。スマホと同じ構造になるだろう。
  • 輸送用の石油も売れなくなる。車では使わなくなり、船と飛行機が残る。
  • エネルギー業界に、破壊型変化が起こる。
  • 石炭火力、原子力は不良債権化するだろう。これらには投資が集まらない。
  • エネルギーは集中から地域分散へと革命的に転換してきている。
  • デンマークでは、集中型の大型火力から地域分散型のコジェネ+風力へ。
  • 日本には約200のご当地電力がある。
  • エネルギーを自分事にして、地方自治を取り戻そうという動きとも連動。
  • 蓄電も急激に安くなる見込みで、テスラが圧倒的に安い。
  • 米国では、太陽光が電気料金以下となってきたが、+蓄電でも間もなく下回りそう。
  • 送電線から離脱する人が増えていくから、電力供給も破壊型変化が訪れるだろう。
  • パワーエリートのものだった電力が、民衆のパワーとなる日が近い。

飯田さんの講演で強調されていたのは、分散型の自然エネルギーは、急速に広がりつつあるIoT、AIと相性が良く、この分野の技術革新は劇的で、市場に破壊的な変化をもたらすということだった。
もちろん、自然エネルギーにも問題はある。
太陽光ならばパネルを再利用できるかどうかとか、風力ならばバードストライクや低周波問題とか。
しかし、これらは世界的な奔流を押しとどめる要因にはならないだろう。
一方、日本では、自然エネルギーの推進を脱原発と関連づけて捉えすぎていて、こうした世界的な技術革新の動きから取り残されているように見える。

河合監督の3部作は、若い世代に原発問題を理解して欲しいと、授業で見せる場合(短縮版)は無料で貸し出してくださるという。
私が担当する授業で学生に見せたいと思っているし、ぜひ多くの学校で上映されるといいだろう。

映画『日本と再生 光と風のギガワット作戦』(監督:河合弘之、2017年)
よこはま里山研究所のコラム
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