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新日本風土記「石垣島」感想

再放送も終わったので、新日本風土記「石垣島」の感想を。

個人的には、自衛隊配備問題の扱われ方が気になっていたが、映像には含まれていなかった。

その理由を想像すると、8/26の「あさイチ」で取り上げられたとき、市長・市議会から抗議を受けたことから、この作品では扱うのを控えたのではないかと思う。今年1月の新日本風土記「やんばるの森」では、高江の米軍ヘリパッド問題や北部訓練場の米軍廃棄物のことを紹介していたので、バランスを考えたのかもしれない。

かりにこの推測が正しいとしても、これは忖度した結果ではない。 新田君は、独自の視点から彼らしい表現を試みていたように、私には映る。

この作品の中では、たとえば、白保の地先の海を埋め立てる新空港計画をめぐり、集落が分断された辛い歴史を掘り起こし、また、ミサイル基地予定地に隣接する嵩田集落のルーツをたどり、台湾移民の苦難の歴史と現在のコミュニティの豊かさを写し取る。これらを紹介することにより、過去と現在を交差させながら、現在の自衛隊配備問題について考えるべきヒントを与えてくれた。

実は、私自身がこうしたアプローチによって、この問題について文章を書いたことがある。だから、勝手な思い込みであるかもしれないが、似たようなことを考えている可能性も高いと思う。

ほかに注目したのは、尖閣諸島の扱われ方である。これも、すぐに政治的な立場から解釈されやすい題材だが、ここで尖閣諸島戦時遭難事件を紹介したところがいいと思った。遺族の方々が、慰霊に訪れるようになって欲しいと願う一方で、政治的な主張を通そうと、そうした死を悼む気持ちを利用しようとする動きには警戒したい。

米原の開拓集落については、先人が築いた礎の上に生きているという歴史を、戦後の計画移民から近年の移住者へと継承している様子が紹介されていて、このセンスは素晴らしいと感じた。私も西表島の開拓集落で、苦難の歴史をうかがったことがあり、何とか移民の思いを受け継げないかと思ったが、それが具体化されている例を知れて良かった。

まとめると、予想していた通り、「八重山合衆国」とも呼ばれる石垣島の特徴が、1時間の作品の中によく描かれていた。一人ひとりの生きてきた道を照らす温かい眼差しを持って、丁寧に石垣島の「多層性とダイナミズム」が表現された優れた作品だと思う。

ついでながら、関礼子・高木恒一編『多層性とダイナミズム―沖縄・石垣島の社会学』(東信堂、2018年)も併せて読まれると嬉しい。

初回放送:2019年10月18日(金) 21:00-22:00、BSプレミアム

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