本コースでは、環境運動を担ってきた当事者の方々をゲストに招き、その人の視点から試行錯誤の経験をお話しいただきます。運動の記憶を記録にとどめるとともに、運動の経験から最良の部分を取り出し、私たちの社会づくり、環境づくりに生かしたいと思います。
Part3では、2000年代以降に展開されてきた動きの中から、持続可能な環境とコミュニティを、ネットワークやAI・ICTの力も生かして、自らでつくってきた経験をお話いただきます。具体的には、アグロエコロジー、不耕起栽培、エコビレッジ、生物多様性保全、AI・ビッグデータ、再生可能エネルギー、ソーラーシェアリング、香害、化学物質過敏症、南西諸島の軍事化、住民投票などを取りあげます。
曜日時間:火曜日 原則隔週19:00-21:00
開催方法:オンライン開催
コーディネーター:松村正治(環境NPO代表、大学教員)
第1回 「耕さない農業」で農と食を見直す
開催日:2023年7月11日(火)19:00-21:00
講師:金子信博(福島大学)
概要:日本で初めて「土壌生態学」の研究室を開き、2018年から福島大学で食農学類と食農科学研究科の開設に携わった。新しい研究科に日本で初めての「アグロエコロジープログラム」を設置し、現役農家を含む多くの社会人を迎え入れ、食と農の「転換」を土壌生態学を基盤として展開しようとしている。常識に反する「耕さない農業」は自然の土の状態を尊重する農法であり、環境との関係、農業経営、農家と消費者の健康を向上するための入り口である。長い間、土の生き物の基礎研究を行ってきた研究者がなぜ農法の見直しを進めるのか?じっくり聞いてほしい。
第2回 暮らしから社会を変えるエコビレッジ~北海道余市の挑戦から
開催日:2023年7月25日(火)19:00-21:00
講師:坂本純科(NPO法人北海道エコビレッジ推進プロジェクト)
概要:食べ物やエネルギー、住まい、循環型経済や市民自治など自分たちの暮らしに関わることを行政や業者に任せ、何も考えない消費者になってしまった日本人。エコビレッジは、私たちがそんな現代人の暮らしを自分たちの手に取り戻すことで、地域の活性や世界の課題解決につながっていくことを目指しています。北海道の余市で実践しているプロジェクトを例に、一市民として地球や地域の環境をどうよくしていったらいいのか考えてみたいと思います。
第3回 感じない「香害」と被害者たちの「運動」
開催日:2023年8月8日(火)19:00-21:00
講師:松田博美(カナリア・ネットワーク全国、(株)ジャパンマシニスト社)
概要:柔軟剤・消臭剤に「マイクロカプセル」が使用されて10年ほどが経ちました。2010年代くらいから健康被害の声があがり「香害」と呼ばれました。退職、休学、転居、家族や友人との別居や別離、病院や行政館内にも入れない、1年中窓を開けることもできない、などという訴えが続いています。精神障害や自死にいたる方もおられます。そんな被害者たちが、どのように窮状を訴え、つながり、活動を続けてきたか。人間の嗅覚を利用した「公害」をお伝えします。
第4回 モバイル端末を用いた市民参加型生物多様性モニタリングの展望
開催日:2023年8月22日(火)19:00-21:00
講師:藤木庄五郎((株)バイオーム)
概要:現在、世界の動植物約100万種が絶滅の危機にあるとされており、生物多様性の保全とその実用的なモニタリング手法の確立が喫緊の課題となっています。近年の深層学習を活用した画像解析技術の進歩は目覚ましく、モバイル端末から得られた画像データの解釈を自動化することで、効率的な現地データ収集のブレイクスルーになる可能性を秘めています。今回のお話では、演者がこれまで取り組んできたスマートフォンアプリによる生物モニタリングの事業を紹介し、関連する分野を要説することで、生物多様性と経済社会の今後の関係性について考察を行います。
第5回 食とエネルギーで地域の未来をつくる―さがみこベリーガーデンの取り組み
開催日:2023年9月5日(火)19:00-21:00
講師:山川勇一郎((株)さがみこファーム、たまエンパワー(株))
概要:2012年以降、FIT太陽光発電が爆発的に普及しましたが、他方で大規模太陽光による環境破壊や地域との摩擦が深刻化しています。脱炭素社会実現には地域や環境と調和した再エネが必要で、「ソーラーシェアリング」はエネルギー・農業・地域の課題を解決する可能性を持つ日本初の技術です。相模原市初・ソーラーシェアリングによる会員制ブルーベリー体験農園「さがみこベリーガーデン」の実践を通じて、課題と未来展望を語ります。
第6回 石垣島の住民投票―国防で浮き出る境界線と消えゆく声
開催日:2023年9月19日(火)19:00-21:00
講師:金城龍太郎さん(石垣市住民投票を求める会)
概要:日本政府は、中国の海洋進出や台湾有事への抑止力として自衛隊の「南西シフト」を進めています。これまで駐屯地のなかった南西諸島にも駐屯地が造られ、私の住む石垣島にも今年3月に陸上自衛隊駐屯地が開設しました。その配備計画をめぐって揺れた島内の状況を、2018年から住民投票を求めてきた私たちの運動の経緯を通して見て頂きたいと思います。小さな南 の島に、いまの日本の縮図を見ることができると思います。