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環境運動のパブリックヒストリーPart4:持続可能な社会を自前でつくる実践的な学び

今期の本コースでは、広い意味での「学び」にフォーカスします。学校教育に象徴される公教育では、今ある社会に適した人材を養成しようとしますが、現在地球規模で生じている環境問題は、現行の社会経済活動の総体が生み出している問題です。また、この問題は要因の複雑さや解決の難しさにおいて、これまで経験したことのないものなので、既存の解法を適用することはできません。自分たちで解決策を考え、多様な知恵を集めて、協働して取り組むことが求められています。こうした問題認識をもとに、これまで各地で人と人、人と自然が共生していくための実践的な学びが多様に展開されてきました。そこで、本コースでは、フォーマルな教育とは異なる多様な実践的な学びをご紹介いただき、持続可能な社会を実現するための学びについて考える機会とします。

曜日時間:火曜日 原則隔週19:00-21:00
開催方法:オンライン開催
コーディネーター:松村正治(環境NPO代表、大学教員)

第1回 水俣病を「不治」から「未知」の病いに ~医療講座・竹の子塾の学習実践  

開催日:2023年10月31日(火)19:00-21:00
講師:川尻剛士(山口大学)

概要:水俣病は近代医療では「不治」の病いと言われてきました。しかし、被害当事者たちにとって、「不治」と言われただけでは何ら救いにはなりません。そこで、被害当事者たちは、「不治」の病いとともに生きるための技法を、生活の中で創造的に蓄積してきました。医療講座・竹の子塾(1977-79)は、被害当事者たちが個別に蓄積してきた技法の共有化を中心に、他方では、医療関係従事者たちが水俣病を〈患者に学ぶ〉ために協働して組織したきわめてユニークな学習実践です。水俣病を「不治」から「未知」の病いに転換する試みから、いま私たちは何を学ぶことができるでしょうか。

第2回 主体性を育む遊びと学び〜よみたん自然学校の取組

開催日:2023年11月14日(火)19:00-21:00
講師:小倉宏樹さん(認定NPO法人よみたん自然学校)

概要:よみたん自然学校では、3,4,5歳児を対象とした3年保育「幼児の学校」、小学生を対象としたフリースクール「小学部」という日常型の自然体験活動を中心に事業を行ってきました。おかげさまで設立20年目を迎え、卒業生で社会人になった人もいます。子どもの好奇心・関心から始まる遊びがどのような学びにつながっているのか、そして、ここで育った子たちがどのように成長しているのか、卒業生はどんなふうに過ごしているのか、などのお話しをさせていただきたいと思います。

第3回 バリ島のエシカルホテルに学ぶ、地域課題をビジネスから解決する挑戦

開催日:2023年11月28日(火)19:00-21:00
講師:藤本亜子(一般社団法人アースカンパニー)

概要:バリ島は世界で最も人気のある観光地の1つですが、日本と同様に観光業による深刻な環境問題・社会課題も抱えています。観光業の促進は、経済的な発展を後押しするようにも思えますが実際に収益を得ているのはごく一部であり、それ以上に課題を生み出す現状は、決して持続可能な社会の在り方とはいえません。様々な環境・社会課題を解決しながら発展していく在り方を具現化するために始めたのが「マナ・アースリー・パラダイス」という未来型ホテル(アースカンパニー運営)です。このホテルを拠点にしたチェンジメーカー育成プログラムには、日本から多くの学生や企業人が持続可能な社会の創り方を共に学びに参加しています。どのような学びや参加者の変容が生まれているか、インパクトについてお話しします。

第4回 地域が学ぶ、地域に学ぶ~対馬市における市民大学の実践 

開催日:2023年12月12日(火)19:00-21:00
講師:高田陽(対馬グローカル大学、合同会社つくもらぼ)

概要:長崎県の離島にある対馬市は大学が無い地域です。そこで、大学と地域を結ぶ域学連携事業が始まり、徐々に地域の人たちを巻き込みながら、市民大学へと発展してきました。オンラインを活用することで、頻繁に島外にいる研究者と議論できる環境が整い、さらに、進学や就職で島を離れた人たちも、テーマごとのゼミ活動を通じて対馬と関われるようになりました。地域を舞台としたグローカルな学びを一緒に考えましょう。

第5回 山村の自然と暮らしを通じてお互いに学ぶ 

開催日:2023年12月26日(火)19:00-21:00
講師:小森耕太(NPO法人山村塾)

概要:1994年、2軒の農家が中心となって山村塾がスタート。週末には農家のもとへ都市部から様々な年代の人たちが集まり、棚田での米づくりや山仕事に取り組みます。1997年からは70~80日の期間で国内外のボランティアが集う国際ワークキャンプ、2015年からは「アート×農」のプロジェクトが行われています。棚田や茶畑、山々に囲まれた山村地域に、いろいろな国や地域、年代の人たちが集い、共に汗を流し、食卓を囲み、語り合う場が続いています。

第6回 市民社会の新たな潮流と市民育ちの可能性を問う 

開催日:2024年1月16日(火)19:00-21:00
講師:李妍焱さん(駒澤大学、日中市民社会ネットワーク)

概要:1995年以降の日本における市民社会の思潮を俯瞰すれば、持続可能な社会に向かおうとする市民的実践の動向も見えてくる。NPOという新たなタイプの組織を軸とした取り組みからソーシャル・ビジネスに代表される事業を軸とした取り組み、さらに近年台頭するプロジェクトを軸とする多様な地域での取り組みに至り、市民社会の「現れ方」が変化している。この変化の中で若い世代が如何に市民として育つのか。持続可能な社会を求めるグローバルな運動の変化や、中国での自然教育ブームなどの話も交えつつ、その場づくりの可能性を問う。

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